一命の予告編を観たとき、なにかわからないけど魅かれるものを感じ、どんなストーリーなのかを確かめるべく、映画館に出かけた。
セリフの数は極力抑えられていた。
求女(瑛太)が竹光で切腹するシーンは見てられなかった。
竹光ゆえになかなか死ねず、何度も渾身の力でお腹に突き刺すシーンが延々と続く、ずっと目を閉じていたが肉を切る音、血が流れる様子、うめき声など耳からの情報はシャットアウトできない。怖かった。
やがて、どうしてそうなったかが、徐々に解き明かされる。
江戸時代、平和な日々の中で、関ヶ原の戦いで豊臣方についた武士は仕官もできず、内職で生計を維持する、赤貧洗うがごとくの生活を余儀なくされる。
そんな状況でも海老蔵の、娘・婿・孫に接するまなざしは温かく、慈愛に満ちている。
ささやかな幸せな日々も、傾きかけ、妻子を守るために求女(瑛太)のとった行動が、狂言切腹。
わずかの金子でも貰って・・・との目論見が外れた。
怒涛の展開とも言えよう。目が放せなかった。
海老蔵の存在感には圧倒される、目の動きだけで多くのことを訴える。
はまり役、本物の侍はかくや、と思えるような潔さ美しさ、見惚れた。
そして大切なものを守るために一命をかけて一人で乗り込み、竹光で戦う、まさに魂で斬りこんでいき、果てる。
己の信じる義を貫いたのだ。
舞台は三百年前だが、精神は現代にも通じる。
日本人に今、まさに今必要なものは?必要なことは?
全編重苦しくて、つらい映画だった。緊張の連続。
けど、静寂に包まれ、美しい日本、清貧で飾らないけど、こんな生き方もあるとの身の引き締まる思いの映画だった。
こんないい映画だから、多くの方に見てほしいと思う。