父の叔母は奈良に住んでいます。
施設で暮らしながらも、父の生存中は時々電話で容態伺いをしてくれ、吹田に入院していた時には病院までお見舞いに来てくれました。
一度お会いしてお礼が言いたいと母はずっと言い続けていたので、春日大社のお参りの帰りにその老健施設を訪ねました。
喜んでくれると思いきや、にこにこして嬉しそうにはするのですが、何を聞いても「知らない、忘れた。覚えてない」の繰り返しです。
あんなに大事にしてくれた父のことも全くわからない様子。
自分の年も、名前もご家族の名前さえもわからないとか。
瞬間的には思い出してもすぐ忘れてしまうそうです。
博士の愛した数式なら、記憶は
80分もつのですが・・・
お見舞いを持っていったのですが、
ここではお金を使うこともないし、食べ物もあるので、お心だけいただきます
とのことでした。
耳が遠くて右の耳元で大きな声で話すとかろうじて通じます。
聞かれたので
香川から来たこと話すと
そんなに遠くから?と驚きます。
会話も続かないし、帰ろうとしたところ、「
もう帰るの?帰らんといて」とぽろぽろ涙をこぼします。
かわいそうで、一緒に泣けてきました。
分からないなりに、何かを感じてくれたのでしょうか?
両手を握って、「元気でいてね、また来るからね」とそこを後にしました。
車いすで玄関まで送ってくれて、ずっと手を振ってくれました。
子供と同じように純粋な気持ちになっているのでしょうね。
顔色もよく、何も思いまどうことがないので、病気をしてもすぐ快復するそうです。
もうすぐ
102歳です。
この十日間で
生後53時間の赤ちゃん
と、
一世紀を超えて記録更新中の赤ん坊のようなひとに会ったことになります。
貴重な体験でした。